2011-04-24

デザインを変えない


ずっと昔、尊敬する某方と ThinkPadのデザイン(機能と見栄え)について議論したことがある。その方の意見は、「VAIOのように、そろそろデザインを変えてはどうか?黒で通すのもどうだろう?」というようなものだった。私は、文房具のように使う機器ではデザインを変えないということが大切だと思っているので、「ThinkPadは欧米の冷蔵庫のように、機能的にも見栄え的にもデザインを変えないところがいいところなのだと思う。だから変えちゃ駄目だ。」と反論した。

どちらか正しかったかということを議論するつもりはない。実際のところは、Lenovoからは新しいデザインのものが提案され、イメージも変わり、その甲斐あってか成長し続けている。一方で、ThinkPadブランドのデザインは大きくは変えず継続して提供してくれている。黒のままだし、キーボードのレイアウトも変えていない。飽きられるということはなく、ちゃんと売れ続けている。

らくらくホンを最初に見たとき、シンプルであるし、ワンタッチで電話する機能が付いた時点で、あとはデザインを変えずにこれで通せばきっと売れ続けると思った。もし、途中で大きくデザインを変えたらアウトだと思った。現在、継続して売れ続けている理由が大きくデザインを変えていないからかどうかは証明できないけれど、私はそうだと信じている。ボタンが大きいとか、キーに刻印された文字が大きいとか、聞き取りやすいだけならぱ他からも出ているが、それらがシェアを奪い取ったようには見えない。

もしかしたら、ごくごく普通の機種で、文字を拡大したり、音声を聞き取りやすくする機能がなくとも、10年前から基本のデザインを守りながら継続して提供している機種があったとしたら、らくらくホンよりも、そちらの方が売れているのではないかとさえ思う。それくらい、利用者の経験を大切にすることは重要だと私は思っている。特にシニアにとっては必須の要件だと思う。

今からでも、"10年デザインを変えない宣言"をすれば、売れるものは多いと思う。
皆さんはどう思われますか?

※もちろん、それまでの経験が十分に生かせる範囲でデザインを変更したり、既存のデザインに影響を与えない範囲で新しい機能を追加するは"有り"と理解しています。

2011-04-23

らくらくホン つながる安心サービス

 今度のらくらくホン ベーシック3 つながる安心サービス は素晴らしいと思う。「使い方」ボタンを長押しするだけで、アドバイザーに直接つながり電話で応対をしてくれるというものだ。利用者には大きな安心感を与えてくれるはず。コストやリスクの観点から何でもIT化が進む中、こうしたコストのかかるサービスの提供を良く決断したと思う。

 電話によるサポートは人件費を増加させる。それだけではない。緊急時に利用する人が出てくるかもしれない。何かにつけてクレームをしたり、さして目的も無いのに利用する人も出てくるかもしれない。躊躇無く「つながる」という環境を提供することは、企業側にとってはとてもリスキーな事なのによく踏み切ったと思う。

 シニアの場合は自分なりに獲得したやり方というものがあって、それ以外の方法を強いられると混乱することがあると私は思っている。ATMでも何でもそうだが機械から質問されつつ機械のやり方で操作を進めるのはシニアの方は苦手なのである。自分のやり方で質問し、自分にあった方法で説明して欲しいのである。それは企業側も分かっているのだが、コストやリスクの観点からIT化を進めざるを得ないのが現状なのだ。

  ただ、このサービスに気になる点が一つあった。ホームページに「ボタンひとつで、アドバイザーが使い方をやさしく教えてくれる」と書いてある。しかし、繋がった状態では例えばメールの送り方などは、実体験してもらいながらの説明はできないはずである。それでは意味が無い。電話を切った途端に何を教えてもらったのか思い出せないかもしれないし、メモを取ってもらうのは大変だ。マニュアルのページ番号を伝えるだけなら、有り難みに欠ける。

 そこで、故郷の母に薦めることになるかもしれないという、もっともらしい理由を見つけて、らくらくホンセンターに電話をしてみた。電話番号は公開されており、そこにかけると直ぐにとても感じの良いオペレーターの声がする。「メール操作は3番」などという録音済みのメッセージなど聞こえてこない。
  • 私「メールの操作を教えていただきたい時など、繋がったままでメール操作など試してみるのでしょうか?」
  • アドバイザー「そのような場合は、ご自宅の電話番号を教えていただいて、こちらからかけ直して、実際に操作していただきながら説明をします。簡単な内容の場合は、メモを取っていただく場合もございます。」
 かけ直してまで説明してくれるなんて素晴らしい。さらに関心した事は、私がいろいろと質問する間、まったく急ぎ立てるような印象を受けなかったこと。それどころか「もうご質問はありませんか?」「また、ご利用下さい」と丁寧な対応をしていただいた。たぶん、このサービスで成功体験をした利用者は、らくらくホンに絶対的な信頼感を持つことになると思う。

2011-04-03

図表の意味を伝える

PDF形式で提供されているテキスト文書や図表について、データ量の大きさの観点から、あるいはデータの利用を容易にするために、html形式あるいはcsvなどのデータ形式で提供すべきだという呼びかけが進んでいます。
北地方太平洋沖地震等に係る情報提供のデータ形式について
これは、アクセシビリティの観点からも大切なことは言うまでもありません。

しかしながら、図表の場合は、その*意味*を要約して伝える仕組みが必要だと思います。数値の羅列は図表にするからこそ見えてくるものがあるわけであり、元データを提供したらそれで良いと言うものではないと思います。

例えば、これは気象庁が海流を図にしたものですが、これの数値データを提供されても何がなんだか分かりません。ここで欲しいのは、福島原発から漏れ出た放射性物質を含む海水は、基本的にはやや南下したあとに、黒潮にのって太平洋と流れていくこと、などでしょぅ。あるいは、ここには原子炉の様子を示す様々なデータを図表にしたものが掲載されています。これは元データがあって、それを表にしたものですが、アクセシビリティという観点では、これを解説したものが欲しいと思います。

図表の解釈はそもそも難しく、人によって解釈が異なることもままありますし、容易でないのは理解しています。しかし、可能な範囲で傾向を伝えることが出来るようになる必要があると思います。例えば、「5号機の使用済み核燃料プールの温度は最小約30度と最高40度の間で、一日に何度かいったりきたりしている。」というような感じです。ここに、「よって安定している」というようなことまでは専門家でない限り書いてはいけないと思いますが、グラフの様子を伝えることに可能な範囲でトライするべきだと思うのです。

アクセシビリティの観点で言うとこの話は代替テキストの話になります。あるいは、図表であればサマリーに記述するべきことの話です。Flashなんかを利用してアニメーションさせているような場合には、音声解説の話になるのかもしれません。

これも今回学びつつある課題の一つですね。