2011-11-06

中札内村豆資料館

6月(2011)、道の駅「なかさつない」に隣接した中札内村豆資料館というところにたまたま寄ったのだが、これが実に味わい深かった。もう、半年近くも過ぎたのに、特別な展示物があったわけでもないのに、少しずつ心の中で存在感が増してきている。部屋の中の少し冷たく静かな空気、豆や道具類に触れたときの感触、歩音・足の裏の感覚が鮮明に思い出される。

中札内は帯広にある。建物は1952年に旧馬鈴薯原々種農場の事務所として建設されたものを使っているそうだ。全国に同じデザインのものが8つあるそうで、そのうちの一つは嬬恋にも現存しているらしい。米国で見るような木造平屋のこぢんまりした建屋である。多く陽を取り入れる設計で、もしかしたら寒くないのかなとも思うけれども、二重窓などにして凌いでいたのだと思う。

この資料館はビーンズ邸とも呼ばれる。十勝で生まれ育った「豆畑拓男」、通称ビーンズさんの家とエントランスには書いてある。(以下、パンフレットより)
「ビーンズさんは、十勝の大平原を開拓し豆栽培で成功した家に生まれ、成長すると、新種の豆を探しに世界各地へ旅に出ました。世界中の豆を味わったビーンズさんは、十勝の豆が世界一すばらしいことに気付きます。」
「その後、生まれ故郷の十勝で、豆の栽培、品種改良や研究に情熱を傾け、現在では、十勝の豆の魅力を多くの人に知ってもらおうと、地元の人々旅行者に自宅を開放しています。」

これは、資料館をつくるために描かれた架空の物語である。ところが、一歩部屋に入ると、本当にそういう人がいたのではないかとだんだんと思えてくる。その人が使ったものとして、その人の言葉で書かれているので、なんども騙されそうになる。違う違う、これは架空の話しなのだと思っていると、生産量や、豆の栽培方法、種類の説明など事実の話しが出てきて、だんだんと事実と架空の世界がまぜこぜになってくる。そうして、今、また思い出すことによって、出来事はますますミックスされて、不思議な記憶が自分の中に作られていく。


・・・

この資料館を企画して、展示物の一つ一つを用意した人は本当に素晴らしい人だと思いました。いずれの展示物も、できるだけ触ったり、音を聞いたり、拡大して見てみたり、五感をたくさん活用するように工夫されています。解説の絵も優しく、目で追っているだけでも楽しいものでした。

地方の小さな資料館ですから、町の事情によってはどうなってまうか分からないのではないかと少し不安です。そうならないように、少しでも応援したくてこれを書きました。

もし、この資料館が1000年続いたら、きっとビーンズさんは実在の人物になっていると思います。

中札内村のホームページ
道の駅での説明