2010-02-21

ユニバーサルデザインのちから

関根さんには、いつも献本をしていただいている。なのに、一度もちゃんとしたお礼をしたことがなく、とても気にしている。お礼は、ちゃんとした感想を添えてと決めているのだが、読書感想文には泣かされた方なので、なかなか書けない。というような言い訳はこれくらいにして、書ける範囲で感想など書かせていただきます。

ユニバーサルデザインのちから / 関根千佳

前半は関根さんならではの、ストーリー仕立てでユニバーサルデザインを説明していくもの。後半は、ご自身の思いも添えて、さらに深く説明していく。前半の物語部分で登場するのは、新人社員の柚衣(ゆい)さん。柚衣さんは、会社や社会でのいろいろな出来ごとから、ユニバーサルデザインに気づき、考え、大切さを学んでいく。サブタイトルに「社会人のためのUD入門」とあるように、社会の中で何らかの活動をしている全ての人たちに、ユニバーサルデザインを知ってほしいと願って書いた本なんだと思う。とても易しく、一つ一つ事例を紹介しながら説明している。ところどころに挟んでいる解説もわかりやすい。きっと、読んだ人は誰でも、ユニバーサルデザインについて、新人さんのような気持ちで取り組んでみたくなるはずだ。

後半はユニバーサルデザインの入門書として、知っておくべき考え方、キーワード、人々とその活動、標準、法律などがまとめられている。私自身、知らないキーワードがいくつもあって、とても勉強になった。たぶん、何かの論文など書くときは再び参照させていただくと思います。(助かります。)


関根さんには、本の中で紹介されているSNSセンターや、それ以前の社内での同好会でずいぶんお世話になった。関根さんが会社を辞める少し前くらいから、ユニバーサルデザインについても何度か議論をした。「ユニバーサルデザインなんて不可能だ。」「アクセシビリティには役に立たない。」というような意見もその頃にはあって、「そんなことは無いよね」というような話で盛り上がったのを覚えている。もう、その頃には、関根さんのユニバーサルデザインに対する基礎は固まっていたんだと思う。

京都だったと思うけど、UDITという会社名を考えていると初めて聞いた時、すぐに "You, Do IT" なんだと思った。(ジャニーズみたい) この本を読んだ人にも、そう問いかけているような気がする。



小樽にて 
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2010-02-06

アクセシブルな電子教材が世界を制す?

アクセシブルな電子教科書や教材を提供できるようになった出版社は、ワールドワイドに活躍する出版会社になるチャンスを持っていると思う。紙の世界の時は、翻訳して、レイアウトを調整して、場合によってはデザインもその国にあわせて製本するという作業が必要で、よほどの売れ筋でないと各国翻訳版なんて出せなかったと思う。けれど、アクセシブルな電子教材であれば、場合によっては何もいじらずに、オリジナルの言語のままで流通させても、買ってくれる学校、先生・生徒は出てくると思う。もちろん、翻訳すればなお流通のチャンスは増す。今の iPhone アプリの感覚だ。

アクセシブルであるということはとても大切。単に電子化するだけの意識だと、本のカバーにイメージとして表示されたタイトルすら翻訳できないような状態が続く可能性がある。正しくアクセシブルであれば、再生する機器はそのイメージが何であるかは取得できるから、必要な言語に翻訳可能だ。イメージはその国の言語のままでも、必要な言語で内容を表示したり、発声させたりすることが出来るようになる。アクセシブルであるというのは、マシン(コンピューターなど)からもアクセシブルであることを意味するんだから。

iPad や Kindle がその世界を切り開こうとしている。日本の出版社はいろいろと問題を抱えているようだけど、早く解決してワールドワイドに共通な土台にのっていかないと、わりと早い段階で業界から締め出されてしまわないかと心配している。大学で使う専門書なんかは、(担当教官執筆の教科書でないかぎり) MITなんかで使われる専門書と時間の遅れなく同じものを採用するようにななるんじゃないかな。

もっとも、iPad や Kindle にも、アクセシブルになったコンテンツを十分に生してブラウジングする機能が必要になる。ブラウジングの雰囲気としては、twitter 仲間の r_puputa さんに、こんなのを教えてもらった。



これは、私のイメージするものに近い。メモに関する機能はまさにこんな感じを期待しているし、この延長で翻訳機能も提供してほしいと思ったりする。さらに、ソーシャルネットワークの助けを借りて疑問点を解決したり、理解を深めたり、そんな機能も期待している。

ともかく、日本の教科書会社も世界を睨んで電子教科書のアクセシブル化に取り組んで欲しいし、機器の方も、多くの期待に応えるように進化してほしい。