2008-10-12

病の起源 ~文字が生んだ病~ を見て

期待に反する内容ではなく、勉強になる部分も多かったけれど、ディスレクシアが訓練によって克服できる障害であると理解してしまった視聴者が多いのではないだろうか。とても心配である。親の躾や環境のせいだと思ってしまう人が増えしまわないか。

番組の中では、エール大学のケン・ピュー所長が次のように発言している。
「読字障害の子供たちでも、適切な訓練を集中的に受ければ、文字を読むのに必要な左脳の39野と40野が、活性化して働くようになることが明らかになってきました。」
さらに進行役である鶴太郎氏が次のように続ける。
「学習のやり方しだいで うまく読めるようになるんですね。」
問題は、"うまく"と表現した部分である。

エール大学といえば、この分野では有名なサリー・シェイウィッツがいる。シェイウィッツ氏は確かに適切な訓練で文字が読めるようになるとは言っているが、流暢性まで克服できるとは言っていないはずである。つまり、読めることは読めるが"うまく"読めるようになるわけではないはずである。もしかしたら最近のケースでは、流暢性も獲得できるケースがあるのかもしれないが、それには、多くの努力と苦労があるに違いないはずで、それを「学習のやり方しだいで うまく読めるようになるんですね。」とくくるのは危険だと思う。

番組全体に関しての感想は、また、機会があれば書きたいと思います。
基本的には良い内容であったと思います。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

この番組は別障害の方の間でも話題になっていました。
ただ、番組だけではディスレクシアの抱える様々な問題は、やはりもう少しピンとこられなかったかたもいました。

しかし、ディスレクシアという概念が知られるようになったことだけでも意義があると思います。

本などでもですが、著名で成功した人を引き合いに出しがちなのは以前から気になっています。
理解されない障害の苦しみ、就学、就労の苦しみ、そんな当事者の声がもっと聞こえてきてほしいなと思いました。

理解されない、わかってもらえないことほど、辛いことはないですから。

てん さんのコメント...

コメント、ありがとうございます。
今回のNHKでは理解されていないこと、就学や就労の苦しみ、そうしたことを伝えるのに時間は取らなかったですものね。
ああいう番組だからこそ、ほんの少しで良いのにふれたらよかったのにとは思います。
特に、小さな子供が将来の夢を語る部分、あそこはそうしたことを考えさせるには良い場面だったですよね。